ジーヴズの事件簿―才智縦横の巻 P.G. ウッドハウス2017年07月31日

☆☆☆☆★

20世紀初頭の英国の作家P.G. Wodehouse の短編小説ジーヴズシリーズの名作選。ロンドンを舞台に、天然ボケの不労所得階級の青年バーティの身の回りに持ち上がる様々な問題を、彼の執事ジーヴズが見事に解決していくユーモア小説。ジーヴズがバーティに仕えているようで、実は、意のままに操っているのが面白い。気楽に楽しめる短編で、何十冊もある宝の山の入り口を見つけたという感じ。

何でも知っているジーヴズはイギリスはもとより全世界で人気のキャラクターで、今でも人気があるようだ。

ask.com という今はマイナーな検索サイトがあるが、以前は、Ask Jeeves という名前の英国の会社だったらしい。買収されて名前が変わった。

ところで、イギリスの執事というと、カズオ・イシグロの「日の名残り」の主人公スティーブンスが真っ先に頭に浮かぶ。こちらは、滅私奉公を続けてきたスティーブンスが、休暇をもらい旅行をしながら人生を振り返る物語。

同じ執事というものの、ジーブズ君とはずいぶん違う。調べてみると、スティーブンスはbutler であり、雇用者の家に仕える。いわば、貴族の館のマネジャーである。一方、ジーブズ君は、雇用者個人に仕える valet 従僕である。やはり、butler のほうが格が上なのだろう、パーティはジーブズを「必要とあればとても有能な執事になれる」と評しているようだ。

浅学な私は、いままでジーブズもウッドハウスも知らなかったのだが、読んで見ようと思ったきっかけは、チェリストのイッサーリス氏がツイッターで、時々、PG Wodehouse の小説からの引用を投稿するのを読んで、興味をもったことである。彼の引用は、どこが引用するほど面白いのか、今一つわからなくて、それが却って興味を引いた。日本人が面白いと思う感覚を外国人に伝えるのが難しいのと同じことなのだろう。

イッサーリス氏のツイッターでは、例えば、こんな引用がされていた。()内は拙訳。

'I spent the afternoon musing on Life. If you come to think of it, what a queer thing Life is! So unlike anything else, don't you know.'
PGW
(午後を人生について思いを巡らして過ごした。考えてみると、人生ってなんて変なものなんだろう! 他の何とも似ていない。そう思わない?)

“She uttered a sound rather like an elephant taking its foot out of a mud hole in a Burmese teak forest.”
― P.G. Wodehouse
(彼女は、像がビルマのチークの森の泥の穴から足を引き抜いた時のような音を発した。)

He looked like something stuffed by a taxidermist who had learned his job from a correspondence course & had only got as far as lesson 3
PGW
(彼は、通信教育で第3教程まで剥製作りを習った剥製師が詰め物をした剥製のようにみえた。)

“It was one of those still evenings you get in the summer, when you can hear a snail clear its throat a mile away.”
― P.G. Wodehouse
(それは、カタツムリが一マイル先で咳ばらいするのが聞こえるほど静かな、あの夏の夜の一晩であった。)
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