「美しい星」 三島由紀夫 著2017年06月03日



先日読んだ、「小説家の休暇」以来、三島の作品を続けて読んでいる。「美しい星」は、UFOが登場するSF風作品。こんなにバラエティ豊かな作家だとは、今まで全く知らなかった。

物語は、埼玉の片田舎に暮らす平凡な家族、大杉家が、UFOとの遭遇体験を介して自分達は他の惑星から来た宇宙人であるとの意識に目覚め、家長、重一郎を中心に、地球の平和のために行動を起こすという、こう書いてしまうとあまりに奇想天外な展開で始まる。 大杉重一郎は、原水爆による人類絶滅の危機を回避しようと、各地で講演を開催し、UFOの会の会報を配布する。そのころ、、同じようにUFOとの遭遇体験を通して、別の惑星から来たと自覚する3人の男がいた。彼らは、人類の欺瞞性を論じ、その絶滅は不可避であると主張している。

物語の見せ場は、重一郎とこの3人組が、顔を合わせ、議論を戦わせる場面である。人類は救うべきだ、人類は滅ぼすべきだ、という立場の違う論客が、人類の愚かさ、浅はかさを述べ、それを認めた上でも否定できない、人類の美点を論じる。迫力から論争が繰り広げられる。

重一郎は、人類が滅んだら、その美点を纏めて以下のような墓碑銘を書きたいと述べる:

『 地球なる一惑星に住める
   人間なる一種族ここに眠る。
  彼らは嘘をつきっぱなしについた。
  彼らは吉凶につけて花を飾った。
  彼らはよく小鳥を飼った。
  彼らは約束の時間にしばしば遅れた。
  そして彼らはよく笑った。
  ねがわくばとこしなえなる眠りの安らかならんことを  』

これを、わかりやすく翻訳すると以下のようになるという。

『(略)
  彼らはなかなか芸術家であった。
  彼らは喜悦と悲嘆に同じ象徴を用いた。
  彼らは他の自由を剥奪して、それによって辛うじて自分の自由を相対的に確認した。
  彼らは時間を征服しえず、その代わりにせめて時間に不忠実であろうと試みた。
  そして時には、彼らは虚無をしばらく自分の息で吹き飛ばす術を知っていた。
(略)』

この物語の上手さは、重一郎や男性3人組に、人類の存続、滅亡という大命題を論じさせながら、一方で、家族や友人との関係に深く喜怒哀楽を支配される小市民としての有様を具に描くことで人間の本質を考えさせるように仕組まれていることであろう。

全くの偶然なのだが、この本を買ったら、帯にこの5月に映画公開とある。観にいってみよう。

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