「ラオスにいったい何があるというんですか?」 村上春樹2016年01月24日



村上春樹さんの「ラオスにいったい何があるというんですか?」(Kindle版)を読んだ。 幾つかの雑誌に発表していた旅行記に加筆し、写真も追加して一冊にまとめたものである。

ボストン、ミコノス島(ギリシャ)、スペッツェス島(ギリシャ)、トスカナ(イタリア)、は過去に著者が長期滞在したところを再訪した時の記録、ほかに、ポートランド(オレゴン州)、ポートランド(メイン州)、ニューヨークのジャズ・クラブ、フィンランド、熊本、アイスランド、ラオスが、取り上げられている。

最初の章で、著者が1993年から1995年にかけてボストンに住んでいたことが紹介されていて驚く。「村上さん、私は1991年から1993年にかけて住んでいたんです。チャールズ川沿いのジョギング道路ですれ違っていたんでしょうね。私のアパートはボストンマラソンのコース沿いにありました。村上さんが走ったときは、窓から手を振って応援していたのですよ」

さすがに、村上さんの文章であり、土地の情景が生き生きと描かれ、個人的な興味とか趣味(ジョギング、カウリスマキ、ジャズ、クラシック、LPレコード、など)に纏わる話を交えながらも、あまり偏らず、悪く言えば(悪く言う必要はないけど)、あたりさわりのない本であるが、皆が楽しく読める本になっている。

ボストンの話であれば、チャールズ河畔の季節毎の風景、ファンウェイ球場の雰囲気、シーフードの楽しみ、何度も、そうそうと、うなずきながら読んでしまう。村上さんが書いているように、「かつて住民の一人として日々の生活を送った場所を、しばしの歳月を経たあとに旅行者として訪れるのは、なかなか悪くないもの」かもしれない。「そこにはあまたの何年かぶんの人生が、切り取られて保存されている。潮の引いた砂浜についたひとつながりの足跡のように、くっきりと」

ボストンのほかに、ポートランド(オレゴン州)、ポートランド(メイン州)、フィンランドも思い出がある場所で、楽しく読めたし、もう一度行きたくなった。さらに、行ったことのない土地も、村上さんの文章を読むと、興味を掻き立てられる。例えば、こんな記述、「キャンティ地区を時間をかけて、気ままにドライブして回るのは素晴らしい体験だ。いささか大げさな言い方をすれば、その体験はあなたの人生におけるハイライトになり得るかもしれない。なだらかな南向きの丘陵に沿って、まるで海原がゆったりとうねるように葡萄畑が広がっている。くすんだ色合いのオリーブの木立も見える。日差しはどこまでも温和で、いつもやわらかく淡い霞のフィルターがかかっているように見える。赤い煉瓦造りの建物と、まっすぐな緑のイトスギと、曲がりくねった白い山道。山の上にはところどころに古い城や、いかにも由緒ありそうなヴィラが散見される(そこにはいったいどんな生活があるのだろう?)」、『白い道と赤いワイン、トスカナ(イタリア)』 の章から引用。

私にも人生のハイライトと言える幾つかの土地、テルライド(コロラド)、シャモニ(フランス)、ニューイングランド地方など、の思い出がある。そういう場所をこれから再訪して、村上さんのようにはいかないが、文章として表現してみたいものである。村上さんのあとがきに曰く、「旅行記ばかりは、旅行の直後に気合を入れて書かないと、なかなか生き生きとかけないもの」、「旅っていいものです。疲れることも、がっかりすることもあるけれと、そこには必ず何かがあります。さあ、あなたも腰を上げてどこかに出かけて下さい」

行きたいが、誰と行くのかと考えると、腰は重い。生涯の伴侶は一昨年、若くして逝ってしまった。下手な連れと行くくらいなら一人旅のほうがましであろうが、楽しいのだろうか?

コメント

_ 片桐 ― 2017年04月21日 00:30

文章を拝読して、良かったです。

吾亦紅さんは、村上さんと同じ、目的地にぼんやりの想像(ラオス)を持って、旅行しに行くことがありましたか?

そういう冒険の能力は、毎回毎回旅行の途中で思い出して、家に帰ったと、日々を送りながら失いますね

_ 吾亦紅 ― 2017年04月22日 20:25

コメントありがとうございます。そうですね。家にいる期間が長くなると、また冒険に行きたくなりますね。そういえば、台湾も魅力的な街でした。

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